会社跨ぎによる運賃のインフレ

整備新幹線開業に伴う並行在来線の3セク化や経営不振で経営分離を行った結果、会社跨ぎによる運賃のインフレ化が
最近目立つようになっている。ここではその概要を挙げ、改善策も書いていく。
併せて、路線バスの分断や、神戸高速鉄道を跨ぐ利用についても述べる。
1:並行在来線問題
2:路線バスの分断
3:神戸高速鉄道を跨ぐ利用


並行在来線問題
北陸・東北(盛岡以北)・九州新幹線が開業したと同時にそれらの路線と並行する在来線(東北本線・鹿児島本線・信越本線)の
第3セクター(以下3セク)転換が行われたが、あらゆる問題点が発生した。
転換された在来線区間は3セク転換によって運賃が急激に値上がりし、当然それらの路線を走る貨物列車の運賃も暴騰した。
流石に物流の荒廃が危惧されたのか、貨物運賃は経営する会社(JR東日本・九州)からの運賃補填でJR時代の運賃を堅持することで解決された。
だが、旅客に関してはそのような救済策が行われず、JR時代と比較して最大4割以上の運賃負担増加となってしまった。
これではますます地域格差が拡大するばかりである。また、沿線住民をマイカーへ移行させるのを助長する事にもなる。

全体で見ると、整備新幹線開業前は黒字だったのに、開業後に整備新幹線、転換3セクが共に赤字のどっちつかずと化しているケースが多い。

旅客に対しても貨物同様に運賃面での救済が必要である。現状では整備新幹線と転換3セクの運賃の差がほぼ皆無の状態となっている。
転換3セクの運賃をJR時代と同水準に戻すのが最善だが、それによる減収分は整備新幹線の収入で補う事となる。

整備新幹線の現在の特急料金の金額は通常の新幹線特急料金と同等だが、自由席料金を指定席と同額にした上で通年繁忙期扱い(通常期+200円)にする程度では足りない。
そこで消費税10%へ増税の際に一部の品物への軽減税率を適用した点に着目してみた。
これを鉄道にも取り入れ、転換3セクは免税とする一方、整備新幹線に対しては特別に高額(転換3セクの肩代わりもかねて100%)とする。これぐらいでないと割に合わない。
乗車券の在来線との同一運賃での共通使用可能も考慮すれば特急券部分に上乗せする形となる。

JRと3セクの間を跨って利用する際に両社の初乗り運賃で急激なインフレ(特に短距離)が発生しており、これも改善すべきである。
両社の初乗りの割引率を高く設定してJR単独時代の運賃とほぼ同水準に調整するのが望ましい。初乗りは収支を考えれば200円を上限とすべきだろう。
ジャパンレールパスや青春18きっぷ等々、JR時代で使えた各種切符を使用可能に戻すのも言うまでもない。
18きっぷ使用不可については、収入配分が転換3セクに一切割当てられないのが原因である為、転換3セク側でも発売し、
その場合に限り在来線を切捨てたJR(北海道、東日本、西日本、九州)に収入配分を回さない代わりに転換3セクに回るようにする。当該路線が無い東海と四国は影響なしで。

IGRいわて銀河を除いてJR時代の運賃設定の欠陥を残存させており、ある駅で一旦降りてから乗り直した方が安いパターンによる不公平が未だに残っている。

県ごとに会社が分かれているのも運賃インフレの原因であり、九州の肥薩おれんじ鉄道は熊本県と鹿児島県を跨っているが、1つの会社とする事で県境を跨ぐ利用での運賃の跳ね上がりが起こっていない。
例えば北陸本線は2015年現在、金沢〜直江津がIRいしかわ、あいの風富山、越後トキめきの3社に分かれており、これらを跨る毎に運賃が急上昇する為、1つの会社に経営統合すべきである。

尤も、並行在来線・整備新幹線共に上下分離による一体運営で運行はJRが担当しつつ、線路や駅などの設備をそれぞれの県が管理するという形でやっていればこんな事にならなかったが・・・。


路線バスの分断
合理化の悪影響で元々1つの路線が2つに分断されてしまい、分断前と比べて運賃が2倍前後になるケースが発生している。
阪神バスの尼崎〜税関前を例として挙げると、2009年4月のダイヤ改悪で尼崎〜芦屋と西宮〜税関前に分断され、
利用区間によっては本来の運賃(210円)の2倍(420円)に暴騰している。
このような理不尽な運賃のインフレを防ぐには乗継指定停留所を設定し、同額もしくは適切な追加運賃を設定すると言った救済策が必要。
同じ運賃で乗り継ぎ、適切な追加運賃設定での乗り継ぎは路面電車では結構見かけるが・・・。

広島電鉄(同じ運賃で乗継)
市内初乗りは150円。指定乗継停留所で下車時、乗継申告の際に先に運賃を払い、乗継カードを貰い、目的地の停留所で乗継カードを渡す。

阪堺電気軌道(適切な追加運賃設定)
初乗り200円、乗継290円(初乗りに90円追加)。阪堺線〜住吉〜上町線の乗継を例に挙げると、浜寺駅前から乗り、住吉で天王寺方面へ
乗り継ぐ際に先に乗継運賃を払って乗継券を貰い、上町線の停留所で下車する際に乗継券を渡す。


神戸高速鉄道を跨ぐ利用
阪神・阪急・山陽・神鉄の間を行き来するにはその間に挟まっている神戸高速の運賃も必要となっている。
神戸高速開業以来の問題点だが、阪神と山陽が1998年に直通特急を運転開始してからこの問題点がさらに目立つようになった。
梅田〜姫路間の運賃は1250円で、阪神310円と山陽790円に加えて神戸高速150円が加算されてしまい、神戸高速の加算が原因で
阪神〜山陽の跨ぎ利用時に運賃面でのネックが付き纏っている。(神戸高速の加算が無ければ1100円で済んでいる)
並行在来線問題の項でも挙げたが、板宿、春日野道、神鉄丸山等々の神戸高速に近い駅では会社跨ぎのせいで神戸高速方面への
利用時に短距離なのに中距離もしくは長距離並みの運賃負担を強いられている。(一応、連絡割引はあるが焼け石に水)
また、元々山陽電鉄の区間だった長田〜西代が神戸高速鉄道に転換されてしまい、長田〜山陽方面の利用は山陽の運賃に加えて
神戸高速の初乗り運賃120円が加算されるインフレが発生している。これは昭和43年から現在に至るまでずっと放置状態である。

近年では神戸電鉄粟生線の赤字による存廃問題があるが、その原因の1つとして湊川駅を境とする運賃の急上昇がある。

運賃のインフレを最小限に留めるには阪急、阪神、山陽、神鉄と神戸高速を跨って利用する際に割引額を多めに設定するのが最善である。
現行は各私鉄+神戸高速の運賃(2019年10月現在130〜150円)だが、割引額を100円程度にすれば運賃の跳ね上がりが大幅に緩和され、各私鉄内完結利用と比べても遜色が無くなる。。


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